高齢者を騙したリフォーム工事

欠陥住宅の問題が起きる原因の一つに担当者、職人の無知がある。今回紹介するリフォームのトラブルは、素人同然の営業が招いた事例です。

軽微なリフォームの場合、営業担当者が営業、積算、計画、工事管理を全て一人でおこなうことがある。彼らはノルマを意識するあまり、受注だけに力を注ぎ、図面や工事の細かなことに気が回らないようだ。

81歳のAさんは自分と86歳で要介護認定を受けている夫のために、築40年ほどの自宅水まわりのリフォームをしようと思いついた。近所にリフォーム店がないため、新聞広告を見て○邦ガスがリフォームを展開している系列店へ電話で見積もりを依頼した。

リフォームの希望内容は

  •  浴室の段差解消のため、入り口に段差のないユニットバスへの交換。
  •  便器、洗面台、給湯器の交換と手すりの設置。
  •  洗濯のたび急な階段を上り下りしなくて済むように、2階バルコニーにある洗濯機スペースを1階へ移動。

後日、担当の営業が持ってきた見積もりは、介護保険の補助金をもらっても予算を30万円ほどオーバーしていたため、その場で断った。その数日後、予算に合わせた見積もりを営業が持ってきた。Aさんは予算内で希望が叶うならと思い、営業を信用しその場で契約した。

工事が始まり実物を見ると、お風呂の入り口に段差がある上に、洗濯スペースが1階に設置できないことがわかる。

約束と違うこれらの件を問い詰めると「階段の手すりをサービスする」と言うなどと内容をはぐらかし、直す気は全くない。また、介護保険の補助金申請もしていないことが判明。あまりのずさんさに、Aさんは実の娘へ相談をした。

Aさんの娘さんは業者との直接交渉を避けるため、私に調査を依頼。私が書類、図面を確認すると、営業が書いた図面では最初から洗濯スペースを設けることは不可能であった。図面には、幅75cm程度の廊下に幅65cmの洗濯機が配置されていて、人が通る幅がわずか10cmしかない、めちゃくちゃな図面であった。これでは実際、洗濯機が置けないのは当たり前。また、営業が選んだユニットバスはバリアフリーではないタイプ。洗面化粧台は見積もりと違うメーカーのものが設置済み。給湯器も見積もりより安いものが付いていた。工事自体もいい加減で、電気配線は素人がおこなったような雑な工事。

工事はあと1日を残しストップさせた。洗濯機が1階にない、段差のある風呂ではリフォームした意味がないとして工事のやり変え、または支払った金銭の返還を求めた。

リフォームは高齢者や障害者などが依頼するケースが多い。見積もりや図面内容など、的確な判断ができないケースがあり、業者側は顧客を騙しやすい。

大手ハウスメーカーも新築の需要が減る現状、リフォームに力を入れて出しているが、メインはやはり新築であり、リフォームのスタッフはプロ野球で言えば2軍のようなメンバーであることが多い。

今後、リフォーム需要が高まれば高まるほどトラブルは増える懸念がある。新築でさえきちんと造れない業界だけに心配です。

一級建築士 長井 良至